こんにちは! インターンの大山です。

今回はここバンガロールにあるソニーインディアソフトウェア開発センター(SISC)にお邪魔してきました!

今回訪問取材させていただいたのはSISCで働いていらっしゃる武鎗行雄様。今回私がインタビュー取材をさせて頂いたのも武鎗さんの著書を読んだからでした。「激変するインドIT業界 バンガロールにいれば世界の動きがよく見える」を日本で読み、ぜひ一度お話しを伺いたいということで突撃取材をさせて頂きました。

 

【武鑓様インタビュー】

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Q現在どんな仕事をされていますか。

 

私は、ソニー株式会社のバンガロールにあるソフトウェア開発拠点の責任者をしています。現在この拠点では、ソニー製品向け組み込みソフトウェア開発と、ソニーグループ会社向けの社内情報システムの開発やサポートをしています。

 

Q:海外赴任までの経緯を教えて頂けますか。

 

私はソニー株式会社入社以来、ソニー製品のソフトウェア開発、設計の仕事をしていました。インドに初めて行ったのは2001年でした。それまでにも仕事で海外に行くことは度々ありましたがほとんど欧米でした。2008年に、中国の大連と上海、シンガポール、そしてバンガロールを視察しました。中でもソフトウェア開発をするならインドだと直感的に思いました。そんな折にインド赴任の話があり、その時に「面白そうですね。」と答えたのがきっかけで、2008年10月にインドに赴任することになりました。決断には迷いませんでしたね。インド人の技術力や、これからのインドIT業界の可能性を感じていました。最初の1年は、日本の組織と兼務していましたので、月一回のペースで、日本に帰っていました。

 

Q:海外赴任をされる前と後ではイメージのギャップはありましたか。

 

インドIT業界と言えば、インフォシス、ウィプロと言った大手インドITサービス会社が有名ですが、実は、世界の名だたるIT企業の多くがバンガロールに拠点を置いていたことです。会社によっては、ソフトウェア開発のオフショア拠点というよりは、研究開発組織を持っており、非常にレベルの高い仕事をしていると感じました。

 

Q:海外赴任をされてから6年が経ちますが、バンガロールに変化はありましたか。

 

大きく変わりました。新国際空港、大型ショッピングモール、バンガロールメトロ、外資系高級ホテルなどが、この数年で誕生しました。しかし、最も大きな変化はインドIT業界です。規模も技術レベルも格段に変わったと思います。また最近では、多くの若者がスタートアップに挑戦し始めています。バンガロールだけで1000社のスタートアップが活動しています。私が着任した頃に、自宅の近所のオフィスビルの一室で起業したFlipkartは、今ではインドNo.1のオンラインショッピング会社になっています。この数年だけでもこれだけ変化が起きているのです。また、欧米企業のインド開発拠点では、もともと欧米本社向けのソフトウェア開発、サポートをしていましたが、最近では、インド市場向けの製品開発を行うようになっています。これも大きな変化だと思います。

 

Q:日本企業がインド進出する際の課題は何でしょうか

 

日本企業のインド進出数は、他のアジア諸国と比べてもまだまだ少ないです。多くは販売会社を設立し、日本で開発設計された製品をインドで販売しようと努力しています。ただ、欧米企業の場合は、もともと、グローバル製品の開発設計のためのオフショア拠点をインドに持っていました。最近インド市場が急速に立ち上がりつつあり、インドで、インド向け製品開発を始めています。そのインド向け商品が、その後の展開で、先進国でも販売され、売れるというケースも出てきています。GEなどが積極的に取り組んでいる「リバース・イノベーション」です。急拡大しているインド市場に、先進国で開発された製品の一部機能をローカライズして導入する方式は、限界に来ていると思います。インドで、インド市場を理解しながら、インド社員と共に、かつ日本企業のノウハウを活かした製品を作っていくことが重要だと思います。モディ新首相が推進している、「Make in India:インドで作ろう」は検討すべき課題だと思います。

 

「ソニーインディアソフトウェア開発センター(SISC)のビル」

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Q:インドから見て日本のIT市場はどのように映っているのでしょうか。

インドは、全世界のオフショア市場の58%(2012年度)を占めているほど、大規模なオフショア先になっています。ただ、そのほとんどが欧米からの仕事です。日本からのオフショアは全体の2%以下です。インドは欧米から仕事を受託することはできているのですが、日本からの受託に成功していないのです。従って、インドから見て、日本のIT市場は、「Rest of World」(その他)に分類されています。インドが今後、力を入れていく市場として、日本とアフリカが取り上げられています。日本市場は、言葉、文化、仕事のやり方などに大きな違いがあり、なかなか参入しにくい市場と見られています。また、日本側のインドIT業界に対する理解が欠けているのも事実です。実際、弊社の様な日本企業の自社開発拠点は極めて少ないです。従来、インドの技術系大学の優秀な卒業生は、インドでは活躍の場がなく、多くが米国に渡ることが多かったです。その中から、最近では、マイクロソフトやノキアのCEOに就任しています。今では、欧米の名だたるIT企業が、インド人材を活用するため、インドに自社開発拠点を設置し、規模拡大をしています。韓国、中国企業も追従しています。日本企業ももっと自社開発拠点を設立し、優秀な人材を獲得し、企業戦略に取り込むべきだと思います。

 

Q:バンガロールをテーマにした本を出した理由を教えてください。

日本のIT業界の皆さんに、インドIT業界の“今”をもっと知ってもらいたかったからです。インドIT業界の象徴として、インドのシリコンバレーと言われている、バンガロールをテーマにしました。一般に、インドは日本の皆さんにとって、ステレオタイプなイメージがあります。暑い、カレー、カースト制度、貧困などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。数年前に「スラムドッグミリオネア」というインドを舞台にした映画が日本でもヒットしました。あの映画は皆さんがイメージするインドをそのまま描いたような映画でした。しかし実際は、インドは極めて多様性に富んだ国です。その中でも、バンガロールは、インドの他の都市とも異なり、年間を通じて気候も快適ですし、コスモポリタンと呼ばれるだけあって、洗練された側面も持っています。もっとバンガロールのIT業界を知ってもらえれば、インドのイメージを少しでも変えられるのではと思い、タイトルにも、「バンガロール」という地名を入れました。

 

Q:ソニーインディアソフトウェアセンターではどのように採用活動を行っているのでしょうか。

キャンパスリクルートと言って、大学を訪問して、毎年50~60名ほどの新卒を採用しています。十数校の大学を訪問して、会社説明、オンラインテスト、3回の面談を繰り返して、採用を決めます。各大学で200~300人程の参加者から数名に絞ります。仕事の必要性によって、経験者採用もしています。現在、会社の規模は総勢で千数百名規模になりました。日本人は10名ほど働いています。

 

Q:インド人と働く上で課題となるのはどのようなことが挙げられるでしょうか

あくまでもソフトウェア開発での話ですが、日本人とインド人では仕事の進め方が異なります。インド人は、欧米企業と仕事をしている事が多く、グローバルスタンダードな仕事のやり方が身についています。従って、自ずと仕事を進めていくうちにギャップが生じます。お互いの考え方の違いを理解した上で、仕事の進め方に合意をとることが重要です。また、インド人に仕事を頼むときには、はっきりと目的や目標を伝えると同時に、その仕事の背景や経緯も説明しておくことが、プロジュクトの成功につながると思います。

 

Q:最後に学生にメッセージをください。

インドは日本にとって、今後ますます重要な国になっていくことは間違いないです。皆さんが、ステレオタイプなインドのイメージではなく、多様性に富み、可能性を秘めた国であるインドを理解する努力が必要だと思います。特にIT業界に関して言えば、日本が思っている以上にインドは進んでいます。インドITを象徴する都市、バンガロールを皆さんにもっと知ってもらいたいと思います。まずはバンガロールを訪問してみてはどうでしょうか。

「最後に武鎗様と」

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【インタビュー後記】

とても穏やかな印象を受けました。説明の際にはパソコンの中からパワーポイントを取り出してくださって、データに基づいて丁寧に質問に答えてくださいました。スタートアップのみならず、日本の大手企業の方がこうしてメール一本入れて会いにいった学生を受け入れて下さるというのは非常にありがたいことです。私自身バンガロールに来る前からお会いしたかった方で貴重なお話しをうかがうことができました。

 

【インタビュイー:武鑓行雄様】

慶應義塾大学工学部、大学院工学研究科修士課程卒業。

ソニー株式会社入社後、NEWS(ワークステーション)、VAIO(PC)、ネットワークサービス、コンシューマーエレクトロニクス機器などのソフトウェア開発、設計、マネジメントに従事。また、「ソフトウェア・アーキテクチャ」をテーマに、マサチューセッツ工科大学へ留学を経験。2008年10月より、インド・バンガロールのソニー・インディア・ソフトウェア・センターの責任者として着任し、現在に至る。

 

著書に、電子書籍「激変するインドIT業界 バンガロールにいれば世界の動きがよく見える」(カドカワ・ミニッツブック)がある。